相続した不動産を売却したときの税金|特例と期限
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親から相続した家や土地を売ってもうけが出ると、所得税と住民税がかかります。相続税を払った人の「取得費加算」と、空き家を売った人の「3,000万円控除」という2つの特例があります。どちらも売る期限があり、同じ売却に重ねては使えません。条文と国税庁のタックスアンサーで確かめました。計算は仕組みを見るためのもので、自分の場合の税額は税務署や税理士に確かめてください。
売る前に、名義を相続人に移す
家や土地は、登記の名義が亡くなった人のままでは売れないので、先に名義を移す登記(相続登記)をします。2024年4月1日からは、相続で取得したことを知った日から3年以内に登記することが義務になりました。
不動産登記法76条の2第1項です。
不動産登記法76条の2第1項を開く
所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
それより前に相続した家も、登記がまだなら令和9年3月31日までに登記する必要があります。法務省の「相続登記の申請義務化に関するQ&A」の説明です。正当な理由なく登記をしないと、10万円以下の過料の対象になることがあります(同法164条1項)。
相続人が何人かいるときは、分け方の話し合い(遺産分割)が先になります。相続人どうしで決めておくことは、遺品整理の買取と相続・税金で扱っています。
売って得たもうけが「譲渡所得」
家や土地を売って得たもうけを「譲渡所得」と呼びます(所得税法33条1項)。もうけは、売った金額から、手に入れたときのお金(取得費)と、売るためにかかったお金(譲渡費用)を引いて出します。土地や建物のもうけは、給料などとは分けて計算します(分離課税)。
国税庁のタックスアンサー(コード3202)です。
譲渡所得の金額は、土地や建物を売った金額(収入金額)から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
相続した場合は、亡くなった人が買ったときの値段と日付を引き継ぎます(所得税法60条1項1号)。親が何十年も前に買った家で、買った値段が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます。同じページの説明です。
所得税法60条1項1号を開く
また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5パーセントよりも少ないときは、譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)とすることができます(コード3258「取得費が分からないとき」を参照してください。)。
譲渡費用は、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。不動産会社にそのまま買ってもらう「買取」では、仲介手数料は生まれません。買取で売る人に付く決まりと付かない決まりは、不動産買取の注意点にまとめています。
持っていた期間で、税率が倍ほど変わる
税率は、売った年の1月1日に持っていた期間で分かれます(租税特別措置法31条・32条)。5年を超えていれば「長期」、5年以下なら「短期」です。相続した家は、原則として亡くなった人が買った日から数えます。相続してすぐ売っても、長期に当たることが多くなります。
長期の税率は、タックスアンサー(コード3208)です。
税額=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)
短期は所得税30%、住民税9%です(コード3211)。どちらも、所得税の額の2.1%の復興特別所得税が加わります。
相続税を払った人は、取得費を足せる(39条)
相続税を払った人が、決まった期間のうちに相続した財産を売ると、払った相続税のうちその財産の分を取得費に足せます。取得費が増えるぶん、もうけが小さくなります。
根拠は租税特別措置法39条1項で、相続税がかからなかった人は使えません。期間の終わりは、相続税の申告期限の翌日から数えて3年です。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月です(タックスアンサー コード4205)。期限について、タックスアンサー(コード3267)はこの要件を挙げています。
その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
足せる額は、この特例を使わないで計算したもうけ(譲渡益)が上限で、売った財産ごとに計算します。
空き家を売った人は、3,000万円を引ける(35条3項)
親が1人で住んでいて空き家になった家や土地を期限までに売ると、もうけから最高3,000万円を引けます。2024年1月1日以後の譲渡で、その家や土地を相続した人が3人以上いると、上限は2,000万円になります。
根拠は租税特別措置法35条3項です。タックスアンサー(コード3306)の説明です。
租税特別措置法35条3項を開く
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(注)まで控除することができます。
どんな家が対象か
「被相続人居住用家屋」は、亡くなった人が住んでいた家のことです。昭和56年5月31日以前に建てられた家で、区分所有の登記がされた建物(分譲マンションなど)は外れます。亡くなる直前に、ほかに住んでいた人がいないことも要件で、子どもが同居していた家は当たりません。老人ホームに入っていた場合の扱いは、タックスアンサー(コード3307)が別に説明しています。
売り方は、耐震の基準に合う家のまま売るか、家を取り壊して土地を売るかです。2024年1月1日以後は、売ったあと翌年2月15日までに耐震の基準に合わせるか、取り壊す形も加わりました。どの形でも、相続から売るまで、事業に使ったり、人に貸したり、誰かが住んだりしていないことが必要です。売った代金が1億円以下で、親子や夫婦など特別の関係がある人に売っていないことも要件です。
いつまでに売るか
相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。しかも今の条文では、令和9年(2027年)12月31日までに売ったものに限られます。
相続から数える期限は、タックスアンサー(コード3306)の要件です。
相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
たとえば2024年6月に亡くなったなら、相続から数える期限は2027年12月31日です。2025年6月に亡くなったなら2028年12月31日です。ただ、35条3項の条文は「令和九年十二月三十一日までの間に」売ったものに限っています。延びるかは今後の税制改正で決まるので、売る前にその時点の条文を確かめてください。
2つの特例は、同じ売却に重ねて使えない
同じ家や土地を売ったときは、取得費加算か3,000万円控除か、どちらか一方を選びます。どちらが得かは相続税の額や売った値段で変わるので、両方で計算して税務署や税理士に確かめてください。
35条3項の条文は、対象から「第三十九条の規定の適用を受けるもの」を除いています。タックスアンサー(コード3306)にも、要件の1つとして並んでいます。
売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
- 亡くなった日(相続の開始)
10か月相続税の申告期限
タックスアンサー(コード4205)
さらに3年取得費加算(39条)の期限まで
相続税を払った人だけ
- 取得費加算の期限
- 空き家の3,000万円控除(35条3項)
- 3年を経過する日の属する年の12月31日まで。ただし今の条文では令和9年12月31日までに売ったものに限る
- 相続登記(76条の2)
- 相続で取得したことを知った日から3年以内。売るときは期限前でも先に登記が要る
仮の数字で計算してみる
仕組みを見るための仮の例です。親が40年前に建てた家と土地を相続し、空き家のまま買取で2,000万円で売ったとします。買った値段は分からず、売るための費用はなかったとします。
- 取得費は、2,000万円の5%で100万円
- もうけは、2,000万円から100万円を引いて1,900万円
- 持っていた期間は5年を超えるので長期。特例が無ければ、所得税は1,900万円の15%で285万円、住民税は5%で95万円。これに復興特別所得税がかかる
- 要件に全部当てはまれば、空き家の3,000万円控除で1,900万円まで引け、課税されるもうけは0円になる
控除で0円になる場合でも、書類を添えて確定申告をすることが要ります(コード3306)。添える書類には、市区町村から受け取る「被相続人居住用家屋等確認書」などがあります。買主が取り壊す形なら、翌年2月15日までに取り壊されたことを示す登記事項証明書なども要ります。
確定申告は、売った翌年の2月16日から3月15日
もうけが出たら、売った翌年の2月16日から3月15日に確定申告をします(タックスアンサー コード2020)。年末調整を受けている会社員でも、給料以外のもうけが20万円を超えると申告が要ります。取得費加算も3,000万円控除も、申告をしてはじめて使えます。
買取で売るときに、あわせて見ておくこと
空き家を買取で売ると、買った会社が家を取り壊して土地を売り直すことがあります。取り壊しの時期は、売る人の3,000万円控除に響きます。耐震の基準を満たさない家を現状のまま売るなら、いつまでに取り壊すかを契約の前に会社に聞いておきます。
相続した家や土地を売る前に確かめること
- 名義を相続人に移したか(相続登記)
- 相続税を払ったなら、取得費加算の期限(申告期限の翌日から3年)
- 昭和56年5月31日以前に建てた、親が1人で住んでいた家なら、空き家の3,000万円控除の要件と期限
- 2つの特例のどちらを使うか
- 売った翌年の2月16日から3月15日の確定申告
要件に当てはまるかで迷ったら、売る前に税務署に聞くのが確実です。登記は法務局や司法書士に、税額の計算は税理士に相談できます。
この記事で確かめたこと
- 原文から引用した文
- 8件
- 出典
- 5件(法令 1)
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