遺品整理の買取、売る前に確かめる相続と税金の線
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親の家を片付けていると、指輪や着物、掛け軸、腕時計のように、買取に出せそうな品物が出てきます。業者に連絡する前に、確かめておきたいことがあります。相続放棄を考えていないか、ほかの相続人と話がついているか、売った代金に税金がかかるか、です。このページでは、民法と所得税法、国税庁の案内の原文で、その線を1つずつ確かめます。
相続放棄を考えているなら、売る前に止まる
亡くなった人に借金があるかもしれないときは、相続放棄を考えることがあります。その期限は、民法915条1項が決めています。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
「単純承認」は、借金も含めて全部を受け継ぐことです。問題は、遺品を売ることが単純承認とみなされる場合があることです。民法921条はこう定めています。
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。一相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。二相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
遺品は相続財産です。それを売れば、1号の「処分」に当たるおそれがあります。処分に当たれば、あとから相続放棄をしようとしても、単純承認をしたものとみなされることがあります。
どこまでが「保存行為」で、どこからが「処分」かは、品物の価値や事情で判断が分かれることがあります。条文だけでは線を引けません。相続放棄を少しでも考えているなら、3か月の期間のうちは遺品を売らずに置いておきます。そのうえで、家庭裁判所の手続の案内を読むか、弁護士や司法書士に相談してから決めるのが確実です。相続放棄は、家庭裁判所に申し述べて行う手続です(民法938条)。
放棄をしたあとも、手元の遺品を自由にしてよいわけではありません。民法940条1項です。
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
放棄したあとに相続財産を隠したり、勝手に使ったりしたときも、単純承認とみなされることがあります(民法921条3号)。
相続人が何人かいるなら、1人の判断で売らない
相続人が2人以上いるとき、遺産を分けるまでの遺品は、相続人みんなのものです。民法898条1項です。
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
「共有」とは、1つの物を何人かで持っている状態です。共有の物について、民法251条1項はこう定めています。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
売ることそのものは、この条には書かれていません。ただ、形を大きく変えるだけでも、ほかの共有者の同意が要ります。品物を手放すときも、ほかの相続人の同意を取っておくのが確実です。
1人が先に売ってしまった場合の扱いは、民法906条の2が決めています。
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
同じ906条の2の2項では、売った本人の同意は要らないとしています。
前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
売った品物も、遺産として残っているものとして分け直される場合があるということです。売る前に、どの品物を誰が売るか、代金を誰が受け取るかを話し合い、メモやメールで残しておくと、あとでもめにくくなります。
仏壇や位牌のように、先祖をまつるための物は扱いが別です。民法897条1項です。
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
「祭祀を主宰すべき者」は、法事などを中心になって行う人のことです。仏壇を処分するかどうかは、その人と相談して決めます。
売る先と売り方を決める
品物を買い取る業者は、古物営業法の許可を受けている必要があります。業者のサイトの許可番号と、公安委員会の一覧で確かめる方法は、古物商の許可番号の調べ方にまとめています。ただし許可は、営んでよいという事実です。高く買うことや、対応が丁寧なことまでは保証しません。
片付けの途中で、業者に家まで来てもらうこともあります。値の付かない物の処分まで頼むなら、買取とは別の許可が要ります(不用品の出張買取と不用品回収の違い)。業者が家に来て買う取引は「訪問購入」と呼ばれます。書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その間は品物を渡さなくてかまいません。手続きは買取のクーリングオフで扱っています。ただし、自分から「この値段で売るので来てほしい」と頼んだ場合などは外れることがあります。外れる場面は出張買取でクーリングオフできない場面で確かめられます。
売った代金に所得税がかかるか
ここからは、売ったあとの税金です。所得税法9条1項は、所得税をかけない所得を並べています。
次に掲げる所得については、所得税を課さない。
そのうちの1つが、同じ9条1項の9号です。
自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得
「じゆう器」は食器や日用の道具のことです。「政令で定めるもの」の中身は、所得税法施行令25条にあります。
法第九条第一項第九号(非課税所得)に規定する政令で定める資産は、生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。一貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品二書画、こつとう及び美術工芸品
国税庁のタックスアンサー(コード3105)は、これをこう言いかえています。
家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。
ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。
1個または1組の価額30万円
30万円以下
生活に通常必要な動産として、売った代金に所得税はかからない
30万円を超える
譲渡所得として、税金の計算に入る
家具や衣服、食器のような日用品は、高く売れても所得税はかかりません。線が引かれているのは、宝石・貴金属・書画・骨とう・美術工芸品で、1個または1組が30万円を超えるものです。茶道具のように組で使う物は、1組の値段で見ます。
ひとつ気をつけたいのは、9号が「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する」と書いている点です。親が使っていた家具のように、親族が暮らしに使ってきた物も文言には入っています。ただ、相続した人が売る場合について、国税庁のタックスアンサーは分けて書いていません。30万円以下でも迷う品物があれば、売る前に税務署に聞いておくのが確実です。
30万円を超える物を売ったとき
30万円を超える宝石や書画を売ったときは、「譲渡所得」(物を売って得たもうけ)として計算します。もうけからは、所得税法33条4項の特別控除を引けます。
前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
1年に売った分のもうけが合わせて50万円までなら、特別控除で0円になります。金の延べ棒や金貨は生活に使う物ではないので、30万円の線とは別に計算します(金の売却と税金)。
持っていた期間でも扱いが変わります。国税庁のタックスアンサー(コード3152)です。
長期譲渡所得となるのは、所有期間が5年を超えている場合で、短期譲渡所得となるのは、所有期間が5年以内の場合です。
総合課税の譲渡所得の金額は次のように計算し、短期譲渡所得の金額は全額が総合課税の対象になりますが、長期譲渡所得の金額はその2分の1が総合課税の対象になります。
遺品の場合、「いつから持っていたか」「いくらで買ったか(取得費)」は、亡くなった人のものを引き継ぎます。所得税法60条1項です。
居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
同じ項の1号に、相続(限定承認をしたものを除く)が入っています。親が20年前に買った指輪なら、相続してすぐに売っても、持っていた期間は5年を超えることになります。
とはいえ、親がいくらで買ったかは分からないことがほとんどです。そのときの扱いは、所得税基本通達38-16にあります。
土地建物等以外の資産(通常、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費がないものとされる土地の地表又は地中にある土石等並びに借家権及び漁業権等を除く。)を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、法第38条及び第61条の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、当該収入金額の100分の5に相当する金額を取得費として譲渡所得の金額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。
売った金額の5%を、買った値段の代わりに使ってよいということです。
仮の数字で流れを追ってみます。亡くなった母が20年以上前に買った指輪を1個、100万円で売ったとします。買った値段は分からず、売るための費用もなかったとします。
- 取得費は、100万円の5%で5万円
- もうけ(譲渡益)は、100万円から5万円を引いて95万円
- 特別控除の50万円を引いて、譲渡所得の金額は45万円
- 持っていた期間が5年を超えるので長期で、給与などと合わせる額は2分の1の22万5,000円
これは仕組みを見るための仮の例です。実際の税額は、ほかの所得や控除で変わります。自分の場合にどうなるかは、税務署や税理士に確かめてください。
確定申告が要るか
会社員で、年末調整を受けている人は、多くの場合、確定申告が要りません。ただし、国税庁のタックスアンサー(コード1900)は、申告が要る人の1つとしてこう書いています。
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人
この線の根拠は、所得税法121条1項です。さきほどの例の45万円は20万円を超えるので、申告が要る側に入ります。
年金を受け取っている人は、国税庁のタックスアンサー(コード1600)の線になります。
平成23年分以後は、その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。
同じページには、こういう注意もあります。
(注2) 公的年金等以外の所得金額が20万円以下で確定申告の必要がない場合であっても、住民税の申告が必要な場合があります。
住民税の申告が要るかは、住んでいる市区町村に確かめます。
相続税は、遺品を売ったかどうかとは別の話
ここまでの所得税は、売って得たもうけにかかる税金です。相続税は、亡くなった人から受け継いだ財産の全体にかかる税金で、別のものです。遺品だけでなく、預金や家も含めた遺産の合計が基礎控除額を超えるかで決まります。国税庁のタックスアンサー(コード4102)です。
基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数(注3))の算式で計算します。
根拠は相続税法15条です。遺産の合計がこの額に近い、あるいは超えそうなときは、遺品も含めて財産の一覧を作り、税務署や税理士に相談します。相続した家や土地を売るときに使える特例と期限は、相続した不動産を売却したときの税金で分けています。
売る前に確かめる順番
遺品を買取に出す前に
- 相続放棄を考えていないか。考えているなら、売る前に家庭裁判所の案内を読むか、弁護士・司法書士に相談する
- 相続人がほかにもいるなら、誰が売り、代金を誰が受け取るかを話し合って残す
- 仏壇や位牌は、法事を中心になって行う人と相談する
- 業者の古物商の許可番号を確かめる。家に呼ぶなら、訪問購入の決まりも読んでおく
- 貴金属・宝石・書画・骨とうで1個30万円を超える物は、譲渡所得の計算と確定申告が要るかを確かめる
売った代金の扱いで迷ったら、税務署に聞きます。相続放棄や相続人どうしの話し合いで迷ったら、家庭裁判所や弁護士・司法書士に聞くのが確実です。
この記事で確かめたこと
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