買取のクーリングオフは出張買取だけ。8日間は渡さなくてよい
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家に来た買取業者に、指輪やネックレスを売ってしまった。あるいは、これから業者が家に来る。そういうときに使えるのが、特定商取引法の「訪問購入」のクーリング・オフです。
国民生活センターの訪問購入のページは、最初にこう書いています。
「不用品や和服の買い取りのはずが貴金属を買い取られた」といった相談が寄せられています。
売ったあとでも、取り消せる期間があります。その間は、品物を渡さずに手元に置いておけます。先に要点だけ置きます。
先に知っておくこと
- 売るつもりがなければ、その場で断ってかまいません。断った人に、業者は勧誘を続けてはいけません。
- 家で売った場合は、書面を受け取った日から数えて8日間は取り消せます。その間は品物を渡さなくてかまいません。
- 迷ったら、消費者ホットライン188か、警察相談専用電話の#9110に電話できます。家族からの相談もできます。
売らないなら、その場で断ってよい
特定商取引法58条の6第3項は、断った人への勧誘を禁じています。
購入業者は、訪問購入に係る売買契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約の締結について勧誘をしてはならない。
「売りません」と一度言えば、業者はそれ以上すすめてはいけない決まりです。同じ条の第1項は、頼んでいない人の家に来て買取をすすめること自体も禁じています。消費者庁の特定商取引法ガイドは、その意味をこう説明しています。
いわゆる飛込み勧誘や、単に相手方から査定の依頼があった場合に、査定を超えて勧誘を行うことは、法に抵触することになります。
業者に禁じられている勧誘と、その場での断り方・あとからの通報先は、押し買いの記事で条文ごとに並べています。
「洋服の査定を頼んだら、貴金属はないかと聞かれた」という場面は、ここに当たりうる話です。来た業者が古物商の許可を受けているかは、古物商の許可番号の調べ方で確かめられます。
クーリング・オフが使えるのは「店の外」で売ったとき
特定商取引法58条の4は、訪問購入をこう決めています。
この章及び第五十八条の二十四第一項において「訪問購入」とは、物品の購入を業として営む者(以下「購入業者」という。)が営業所等以外の場所において、売買契約の申込みを受け、又は売買契約を締結して行う物品(当該売買契約の相手方の利益を損なうおそれがないと認められる物品又はこの章の規定の適用を受けることとされた場合に流通が著しく害されるおそれがあると認められる物品であつて、政令で定めるものを除く。以下この章、同項及び第六十七条第一項において同じ。)の購入をいう。
ポイントは「営業所等以外の場所」です。自宅に業者が来て買い取る出張買取は、ここに入ります。
反対に、自分で店に持ち込んだ買取と、品物を箱に詰めて送る宅配買取は、業者が家に来ないので訪問購入に当たりません。宅配買取で断ったときの返送料や返事の期限は各社の規約で決まるので、宅配買取のキャンセルと返送料で比べています。このため、この記事のクーリング・オフは使えません。ホテルや集会所の買取会場も、何日か続けて買い取る品目を掲げ、決まった設備を置いている会場は、店と同じ扱いになることがあります(消費者庁の通達)。
また、括弧の中にあるとおり、政令で対象から外されている物品があります。家で売った場合でも、品物によっては当てはまりません。外れる物品と場面は、出張買取でクーリングオフできない場面の記事で扱います。
書面を受け取った日から8日間は、取り消せる
取り消せることは、58条の14第1項の前半に書かれています。
購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約を締結した場合を除く。)におけるその売買契約の相手方(以下この条及び次条において「申込者等」という。)は、書面又は電磁的記録によりその売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
「電磁的記録」は、メールや業者のサイトのフォームなどのことです。紙のはがきでも、メールでもかまいません。
期間は、同じ項の後半(ただし書)にあります。
ただし、申込者等が第五十八条の八第一項又は第二項の書面を受領した日(その日前に第五十八条の七第一項の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、購入業者が第五十八条の十第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は購入業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該購入業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。
数え始めるのは、業者から書面を受け取った日です。58条の7は申し込みのときの書面、58条の8は契約を結んだときの書面を、業者に渡させています。先に58条の7の書面を受け取っていれば、その日から数えます。受け取った日を1日目として数えるので、10月1日に受け取ったなら10月8日までです。
「もう取り消せない」と事実と違うことを言われたり、おどされたりして8日を過ぎた場合は、数え直しになります。業者が改めて「取り消せます」と書いた書面を渡し、それを受け取った日から、また8日です。
書面をそもそも受け取っていない場合について、消費者庁の通達はこう書いています。
したがって、購入業者がこれらの書面を交付しなかった場合は、クーリング・オフをすることができなくなるまでの8日間の起算日が到来せず、クーリング・オフできる期間が継続することになる(すなわち、クーリング・オフをする権利が売買契約の相手方側に留保されていることになる。)。
「書面をもらっていないから、もう遅い」とあきらめる必要はありません。同じ通達は、クーリング・オフのことが書かれていないなど、書くべきことが欠けた書面も同じように扱うと解しています。
- 書面を受け取った日(1日目)
8日取り消せる。品物も渡さなくてよい
58条の14・58条の15
- この期間を過ぎると取り消せない
- 書面を受け取っていない
- 8日を数え始めない
- 事実と違うことを言われたり、おどされたりして8日を過ぎた
- 「取り消せます」と書いた書面を受け取った日から数え直す
8日間は、品物を渡さなくてよい
この記事でいちばん大事なのは、ここです。58条の15は、引渡しを断ってよいと決めています。
申込者等である売買契約の相手方は、前条第一項ただし書に規定する場合を除き、引渡しの期日の定めがあるときにおいても、購入業者及びその承継人に対し、訪問購入に係る物品の引渡しを拒むことができる。
「前条第一項ただし書に規定する場合を除き」は、8日が過ぎたあとを除く、という意味です。契約書に「今日渡す」と書いてあっても、8日の間は断れます。
そして業者の側には、そのことを告げる義務があります。58条の9です。
購入業者は、訪問購入に係る売買契約の相手方から直接物品の引渡しを受ける時は、その売買契約の相手方に対し、第五十八条の十四第一項ただし書に規定する場合を除き、当該物品の引渡しを拒むことができる旨を告げなければならない。
渡さずにいても、約束を破ったことにはなりません。消費者庁の特定商取引法ガイドにもこうあります。
売買契約の相手方は、クーリング・オフ期間内は債務不履行に陥ることなく、事業者に対して契約対象である物品の引渡しを拒むことができます。
ただし、品物を渡さない間は、代金も払ってもらえないことがあります。消費者庁の通達です。
売買契約の相手方が物品の引渡しを拒絶した場合、特約がない限り、同時履行の抗弁権によって購入業者は売買契約の相手方からの代金請求を拒むことができる。
渡さないと決めた場合、品物とお金の引き換えは8日が過ぎてからになることがあります。その間に家族と相談して、別の店の値段と比べることもできます。
品物がもう転売されていたら
品物を渡したあとで取り消しても、その品物が別の人に売られていることがあります。58条の14第3項です。
申込者等である売買契約の相手方は、第一項の規定による売買契約の解除をもつて、第三者に対抗することができる。ただし、第三者が善意であり、かつ、過失がないときは、この限りでない。
「善意であり、かつ、過失がない」は、取り消されるかもしれない品物だと知らず、知らないことに落ち度もない、という意味です。その買い手には、品物を返すよう求められません。品物が戻らないときは、業者にお金で埋め合わせを求めることになると考えられます。
業者は、8日の間に品物を別の人に渡すなら、取り消されることがあると相手に知らせなければなりません(58条の11の2)。渡したら、そのことを売った人にも知らせる決まりです(58条の11)。それでも、確実なのは8日が過ぎるまで品物を手元に置くことです。
取り消したあとの、お金と品物
取り消したことで、違約金などを払う必要はありません。58条の14第4項です。
申込みの撤回等があつた場合においては、購入業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
受け取った代金は返しますが、返すための費用は業者の負担です。消費者庁の特定商取引法ガイドの説明です。
クーリング・オフを行った場合、相手方は、既に物品を事業者に引き渡していたり、代金を受け取っている場合には、事業者の負担によって、物品を返却してもらったり、代金を返却することができます。代金の利息を返却する必要はありません。
契約書に「キャンセル料がかかる」「取り消しはできない」とあっても、この決まりより不利な約束は効力がありません。58条の14第6項です。
前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
取り消しの通知の出し方
通知は、出した時点で効力が生まれます。58条の14第2項です。
申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。
8日目に出せば、業者に届くのが9日目以降になっても間に合います。
はがきに書くことは、消費者庁のクーリング・オフのチラシに記載例があります。契約した日、会社名、担当者名、品名、金額、「上記の契約を解除いたします」という一文、通知した日、住所、氏名を並べる形です。例は物を買った場合のものなので、買取なら会社名は買取業者の名前に、金額は買取の金額に置き換えます。同じチラシは、出す前にはがきの両面をコピーしておくことをすすめています。
送り方は、控えが残る方法を選びます。
クーリング・オフを行う際には、後々のトラブルを避けるためにも、書面の場合には特定記録郵便、書留、内容証明郵便等で行うことが薦められます。
メールやフォームで出すときも、同じく記録を残します。
また、電磁的記録の場合には、例えば、電子メールであれば送信したメールを保存しておくこと、ウェブサイトのクーリング・オフ専用フォーム等であれば画面のスクリーンショットを残しておくことなど、証拠を保存しておくことが望ましいと考えられます。
自分で業者を呼んだ場合
58条の17第2項1号は、家で売る契約をしたいと自分から求めた人との取引を、クーリング・オフの対象から外しています。ただし「来てもらった」だけで、すぐこれに当たるわけではありません。消費者庁の通達は、見積もりを頼んだだけの場合をこう扱っています。
また、購入価格について事前に相手方の同意を得ていても、訪問後に手数料や搬出料といった別の費用を相手方に請求することにより、実質的には購入価格を減額させるような場合や、訪問購入の方法等についての単なる問合せ又は資料の郵送の依頼等を行った際に、購入業者から訪問して説明をしたい旨の申出があり、これを相手方が承諾した場合、「見積りをしてほしいので来訪されたい。」と相手方が明確な取引意思を有しないまま、契約準備に当たる行為のために購入業者に自宅への来訪を求めた場合は、同号には該当しない。
どこまでが「自分から求めた」に当たるかは、出張買取でクーリングオフできない場面の記事で、ほかの適用除外と一緒に扱います。
迷ったときの相談先
契約や取り消しのことは、消費者ホットラインです。消費者庁の案内では、こう呼びかけています。
困ったときは、一人で悩まずに、「消費者ホットライン」188にご相談ください。
近くの消費生活センターなどにつながります。
業者が帰ったあとで品物が無くなっている、強い言葉で迫られて怖かった、という場合は、警察にも相談できます。国民生活センターが訪問購入の注意喚起で案内している番号です。
生活の安全に関わる悩みごと・困りごとなど、緊急でない相談を警察にする場合は、全国統一番号の「#9110」番をご利用ください。
いま身の危険があるときは、110番です。
離れて暮らす親の家に業者が来ていた、という場合は、家族が代わりに相談できます。
消費生活センター等への相談は、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターなどの職員からでも可能です。
8日の期間は、書面を受け取った日から進みます。書面が手元にあるなら、まず日付を確かめてください。このサイトの調べ方と運営者のことは、運営者情報に書いています。
この記事で確かめたこと
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