押し買いとは?業者に禁じられた勧誘と断り方・通報先
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押し買いとは、頼んでもいないのに買取業者が家に来て、品物を買い取ろうとすることです。法律の言葉ではありません。特定商取引法では、業者が家に来て物を買い取る取引を「訪問購入」と呼び、頼んでいない人の家での勧誘を禁じています。消費者庁が配っているチラシは、はっきりこう書いています。
購入業者が突然家に来て買取りをすることは、法律で禁止されています。
このページでは、業者に禁じられていることを条文で並べ、その場での断り方と、あとで相談・通報する先をまとめます。公表された行政処分も実際に数えて、どの決まりが破られているかを見ました。
先に知っておくこと
- 頼んでいない業者を家に上げる必要はありません。「売るものはありません」と断ってかまいません。
- 売ってしまった場合も、書面を受け取った日から8日間は取り消せます。その間は品物を渡さなくてかまいません。
- 相談は消費者ホットライン188、怖い思いをしたら警察相談専用電話#9110、いま身の危険があるときは110番です。
押し買いの手口
よくあるのは、はじめは別の品物の話をして、家に上がってから貴金属の話を出す形です。同じチラシは、相談の例をこう紹介しています。
電話では「お皿を買い取ります」と言われていたのに、家に来たら「貴金属を売ってくれ」と言われ、アクセサリーを強引に買い取られた。
2026年8月に九州経済産業局が業務停止を命じた3社の件でも、同じ流れが認定されています。まず名乗らないまま「この付近のご自宅を回っています。なにかいらないものがあれば持って行きますが、何かないですか。」と声をかけ、改めて来る約束を取り付けます。処分の公表資料には、約束の日に来た従業員の言葉が載っています。
後刻、Two-callの従業員であるWは、消費者宅を訪問した際、消費者Cが本件売買契約②の締結について勧誘を要請していないにもかかわらず、消費者Cに対し、「ところで、貴金属とかアクセサリーとかって持ってないですか。買い取りますよ。」などと告げ、本件売買契約②の締結について勧誘し、本件3社は、消費者Cと本件売買契約②を締結した。
「本件売買契約②」は、最初の約束には入っていなかった貴金属などの買取のことです。いらない物を引き取ってもらうつもりで会ったのに、話が貴金属に移ったら、それが押し買いの入口だと考えてよいでしょう。
業者が最初にしなければならないこと(58条の5・58条の6第2項)
特定商取引法58条の5は、勧誘の前に名乗ることを業者に義務づけています。
購入業者は、訪問購入をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、購入業者の氏名又は名称、売買契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る物品の種類を明らかにしなければならない。
会社の名前、買い取りのすすめに来たこと、何を買い取りたいのか。この3つを、すすめる前に言わなければなりません。インターホン越しに、まずこの3つを聞けば足ります。答えがあいまいなら、それだけで断る理由になります。
名乗るときに身分証を見せることまでは、法律は求めていません。ただ、消費者庁の通達はこう書いています。
特に身分証明書等を携帯提示することを法において義務付けているわけではないが、できる限り身分証明書等(例えば、古物営業法(昭和24年法律第108号)上の古物商に該当する場合は、同法で規定される行商従業者証)を携帯提示することが望まれる。
中古品を買い取る業者は、古物営業法の許可を受けた古物商です。許可番号は、古物商の許可番号の調べ方で公安委員会の一覧と照らし合わせられます。ただし、許可は古物を扱ってよいという意味で、取引の信用を保証するものではありません。
名乗ったあとも、すぐにすすめてよいわけではありません。58条の6第2項です。
購入業者は、訪問購入をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、勧誘を受ける意思があることを確認することをしないで勧誘をしてはならない。
「話を聞いてもらえますか」と聞かれたら、「いいえ」と答えてかまいません。
頼んでいない人の家で、すすめてはいけない(58条の6第1項)
押し買いそのものを禁じているのは、58条の6第1項です。
購入業者は、訪問購入に係る売買契約の締結についての勧誘の要請をしていない者に対し、営業所等以外の場所において、当該売買契約の締結について勧誘をし、又は勧誘を受ける意思の有無を確認してはならない。
「勧誘の要請」は、こちらから「売りたいので話を聞かせてほしい」と求めることです。いきなり玄関に来る飛び込みは、ここに当たりません。
では、先に業者から電話があって、訪問の約束をしてしまった場合はどうでしょうか。いわゆるテレアポの形です。消費者庁の通達は、58条の6第1項の説明の中でこう書いています。
購入業者から電話をかけ、訪問して勧誘を行ってよいか否かを積極的に尋ねて相手方から「勧誘の要請」を取り付けるような場合も同様である。
「同様」とは、直前の文にある、査定だけを頼んだ場合などと同じく「勧誘の要請」があったとはいえない、という意味です。業者からの電話で「伺ってもいいですか」と聞かれ、「はい」と答えたとします。それでも、家で買取をすすめてよいことにはなりません。なお、同じ説明は、電話でのすすめやダイレクトメールそのものはこの項では妨げられないとしています。禁じられているのは、家に来てからすすめることです。
こちらから呼んだ場合でも、呼んだ品物のほかはすすめられません。
ある特定の物品について相手方から勧誘の要請を受けて訪問する場合であっても、その他の物品について勧誘をすること又は勧誘を受ける意思の有無を確認することは禁止される。
「着物を見に来て」と頼んだ業者が指輪の話を始めたら、それはこの禁じられた勧誘に当たります。家に呼ばずに着物を売る方法は、着物の宅配買取で5社の規約を比べています。一度「売りません」と言った人にすすめ続けることも、同じ条の第3項が禁じています。
うそと脅しも禁じられている(58条の10)
58条の10第1項は、すすめるときのうそを禁じています。
購入業者は、訪問購入に係る売買契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問購入に係る売買契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
「不実のこと」は、事実と違うことです。同じ条の第3項は、おどして困らせることも禁じています。
購入業者は、訪問購入に係る売買契約を締結させ、又は訪問購入に係る売買契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。
どんな言い方がうそに当たるのか、通達は例を挙げています。品物の質についての例です。
例えば、事実に反して、「この指輪の金はメッキなので購入価格が低くなってしまう。」と告げることは同号に該当する。
先のことを言い切って急がせる言い方も、事実と違えば当たります。
なお、契約締結段階で告げている内容が実現するか否かを見通すことが不可能な場合であっても、告げている内容が客観的に事実と異なっていると評価できる限り不実の告知に該当する(例えば、「近いうちに金価格は必ず暴落するので、今のうちに売ってしまった方が良いですよ。」などと告げる場合。)。
警察のお墨付きがあるかのような言い方も、うそに当たります。
例えば、事実に反して、警察署等の公的機関から消費者保護の観点から適正な取引を行っている購入業者として認可を得ている業者であるかのように告げること(注:古物営業法の法目的は盗品の流通防止であり、古物営業法上許可を得ている古物商であることをもって消費者保護の観点から適正な取引を行っている購入業者である、ということはできない。)や、「御近所はみんな売ってくれましたよ。」と告げて訪問購入に係る売買契約の勧誘を行うことは同条第8号に規定する事項についての不実告知に該当する。
「近所の人も売った」「今のうち」と言われても、その場で決める理由にはなりません。
破った業者はどうなるか
58条の10に違反すると、刑事罰があります。特定商取引法70条の柱書と1号です。
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第六条、第十三条の二、第二十一条、第三十四条、第四十四条、第五十二条又は第五十八条の十の規定に違反したとき。
1号の最後に58条の10が入っています。一方、名乗らない(58条の5)、頼んでいないのにすすめる(58条の6)違反は、それだけでは罰金になりません。まず国や都道府県が指示(58条の12)や業務停止の命令(58条の13)を出します。その命令に従わないと、罰則の対象になります。契約の書面を渡さない違反や、書くべきことが欠けた書面を渡す違反は、71条1号の対象です。6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。
公表された行政処分を数えた
処分は公表されます。消費者庁の特定商取引法ガイドは、行政処分の一覧についてこう説明しています。
消費者庁、地方経済産業局及び都道府県における特定商取引法に基づく行政処分について、事業者名や処分内容などの情報を年度別に掲載しています。(原則として処分日が属する年度の翌年度の開始から5年間を経過するまでの間掲載を行っています。)
古い処分は一覧から外れるので、数えられるのは載っている範囲だけです。この一覧の検索で、取引の種類を「訪問購入」にして引きました(2026年9月24日)。出てきたのは38行で、処分日は2022年12月から2026年8月までの8日分です。1つの会社に業務停止命令と指示が別の行で並び、代表者への業務禁止命令も別の行です。このため、行の数は会社の数ではありません。国と県が同じ会社を同じ日に処分した分も、2回並びます。会社ごとにまとめると14社になりました。違反とされた条を、会社の数で並べます。
| 違反とされた条 | 中身 | 14社のうち |
|---|---|---|
| 58条の6第1項 | 頼んでいない人へのすすめ | 13社 |
| 58条の8第2項 | 契約の書面の記載もれ | 13社 |
| 58条の9 | 品物を渡さなくてよいと告げない | 13社 |
| 58条の6第2項 | 聞く気があるか確かめずにすすめる | 12社 |
| 58条の6第3項 | 断った人へのすすめ | 10社 |
| 58条の5 | 名乗らない・目的を言わない | 8社 |
| 58条の12第1項4号 | 迷惑なすすめ方など(省令) | 4社 |
取り扱う品物の欄には、どの会社にも貴金属が入っていました。58条の10(うそ・脅し)を理由にした処分は、この一覧の中にはありませんでした。一覧に載るのは行政処分だけで、刑事事件は載りません。うその説明が無かったという意味ではない点に注意してください。
処分された業者のほとんどは、頼まれていないのにすすめ、書面に書くべきことを書いていませんでした。「8日間は品物を渡さなくてよい」とも告げていませんでした。断ってよいこと、書面を確かめること、8日間は渡さなくてよいこと。この3つを知っていれば、押し買いの多くは手前で止められます。8日間の取り消しと、品物を渡さずにおく決まりは、買取のクーリングオフの記事で扱っています。業者に「この取引は対象外」と言われたときは、出張買取でクーリングオフできない場面で確かめられます。
その場での断り方
業者が家に来たとき
- ドアを開ける前に、インターホンで会社の名前と用件を聞く
- 頼んでいないなら「売るものはありません。帰ってください」と伝える
- 会社の名前、来た日時、言われたことをメモしておく
- 契約してしまったら、渡された書面の日付を確かめ、8日間は品物を手元に置く
家に上げてしまった場合も、見せる品物はこちらで選べます。チラシの2つ目の注意はこうです。
買取りを希望しない物品は見せない。
「ほかに何かありませんか」と聞かれても、探して出す必要はありません。
帰ってほしいと伝えても帰らない、大きな声を出されて怖い、というときは警察を呼んでかまいません。政府広報オンラインは、110番をこう説明しています。
「110番」は、今すぐ警察官に駆けつけてもらいたいような緊急の事件・事故などを受け付ける緊急通報ダイヤルです。
あとで相談・通報する先
業者が帰ったあとは、目的に合わせて窓口を選びます。
契約を取り消したい、お金や品物を取り戻したいときは、消費者ホットライン188です。
地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口をご案内します。
品物が持ち去られた、おどされたなど、警察に相談したいけれど急ぎではないときは#9110です。
「#9110」番は、全国どこからでも、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながる全国共通の電話番号です。
業者そのものを国や都道府県に知らせたいときは、特定商取引法60条の申出が使えます。
何人も、特定商取引の公正及び購入者等の利益が害されるおそれがあると認めるときは、主務大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる。
「何人も」とあるとおり、被害にあった本人でなくても出せます。消費者庁の申出制度のページも、同じように答えています。
直接被害にあった人に限らず、誰でもできます。
離れて住む親の家に業者が来ていた、という家族からでも出せるということです。ただし、申出は自分のトラブルを解決してもらう手続きではありません。
いいえ、申出制度は同じような被害が拡大するのを防ぐための制度で、個人救済を目的としたものではありません。
申出書の出し先は、県の中だけで動く業者なら都道府県知事、広い地域で動く業者なら消費者庁長官か経済産業局長です。書類を作らずに情報だけを届けるなら、消費者庁の特定商取引法違反被疑情報提供フォームもあります。どちらも、自分の契約を取り消す話は188に、業者の違反を知らせる話は申出やフォームに、と分けて使います。188と申出を両方使ってもかまいません。
取り消しの手続きは、書面を受け取った日から8日という期限があります。迷ったら、先に188へ電話して、書面の日付を一緒に確かめてもらうのが近道です。
この記事で確かめたこと
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